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法と科学の哲学カフェ in 仙台report

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法と科学の哲学カフェ in 仙台 「災害・プライバシー・法」

テーマ:災害・プライバシー・法
日時 :2012年12月 3日(月)18:00~20:00
場所 :坐カフェ
仙台市青葉区大町1-3-7 横山ビル1F
参加費:500円(コーヒー付き)
申込み:必要(当日受付あり)
主催 :JST-RISTEX「不確実な科学的状況での法的意思決定」プロジェクト


リード文:
プライバシー概念は極めてファジーであるが、震災後の状況から
明らかなようにプライバシーが守れない生活は健康・財産に損害を
もたらす可能性がある。
しかし、(1)概念の曖昧性・文脈依存性
(2)プライバシーが守られていないことが損害の明確な原因となっている(因果関係)の証明が困難 であることから、プライバシー関連の法整備をめぐる議論はなかなか確固たる結論に到達していない。

今回のカフェではとくに一次避難と長期避難におけるプライバシー保護対策の相違をケーススタディに、今後の災害に向けた枠組作りに向けたアイディア、さらにこのような場合におけるプライバシー侵害のケースに法的に対応するとすればどのような問題が発生するのか、といった論点を、防災教育関係者、法哲学者、哲学者が提示し、参加者を交えた議論を行う。

流れ:
1.「法と科学のハンドブック」の説明
2.カフェの趣旨説明
3.主催者スタッフの自己紹介
4.参加されたみなさまの自己紹介
5.村上さんの話題提供(カフェの話題の播種)
6.フロアに開いて全体でディスカッション ←メイン
7.参加者全員がひと言ずつ話してラップアップ

話題提題 :久利美和(東北大学)、吉良貴之(常磐大学)、村上祐子(東北大学)
司会・進行:小林史明(明治大学)
受付・記録:立花浩司(北陸先端科学技術大学院大学)
写真:大石亜衣(東北大学)

参加者:9名(スタッフ,話題提題者を除く)


 中村プロジェクトでは、2012年12月3日に仙台市街地にあるカフェ「坐カフェ」におきまして「法と科学の哲学カフェ in 仙台「災害・プライバシー・法」」を開催いたしました。

 プライバシー概念は極めてファジーですが、震災後の状況から明らかなように、プライバシーが守れない生活は健康・財産に損害をもたらす可能性があります。しかし、(1)概念の曖昧性・文脈依存性(2)プライバシーが守られていないことが損害の明確な原因となっている(因果関係)の証明が困難であることから、プライバシー関連の法整備をめぐる議論はなかなか確固たる結論に到達しておりません。

 今回のカフェでは、とくに一次避難と長期避難におけるプライバシー保護対策の相違をケーススタディに、今後の災害発生時に向けた枠組作りに向けたアイディア、さらにこのような場合におけるプライバシー侵害のケースに法的に対応するとすればどのような問題が発生するのかといった論点を、本プロジェクトのメンバーで防災教育関係者の立場から久利美和(東北大学)、法哲学者の立場から吉良貴之(常磐大学)、そして哲学者の立場から村上祐子(東北大学)よりそれぞれ提示し、参加者を交えた議論を行うことを目指しました。

 プライバシーとひと言で言っても、その中には情報プライバシーと健康プライバシーのふたつの側面を含意します。先般の東日本大震災においては、避難所における傾聴ボランティアの存在が注目されましたが、傾聴することによって得られた様々な情報の秘密保持と、外部には容易に口にすることができないことによるボランティア自身のストレス発散をどうやってバランスさせるかという問題が指摘されました。また、震災直後の極限状態ではプライバシーは大きな問題にはならず、時間の経過にしたがってプライバシー概念も変遷していったこと、避難生活が困難な発達障害をもつ方々とどう向き合っていけばよいかといったこと、さらに第三者からは見られたくない、あるいは放ってほしいという個人の権利と集団の見守りとのバランス等も議論の俎上にのぼりました。

 立場や文脈、時間軸によって変化するプライバシー概念は、果たして法によって拘束することが可能なのか、「敢えて法を犯す」(非常時免責)という意思決定も行政には必要ではないか、くわえて根本的には法はそもそも健康や財産を救う存在なのか、それぞれの文脈をまとめていかないと上手くないのではないか、といった様々な論点に議論が展開していきました。

 災害時におけるプライバシーと法の問題を様々な視点から論点整理するには、2時間のカフェで議論を尽くすことは難しいと思われます。しかし、今回のカフェという「場」を通じ、仙台の地で今後の災害発生時に向けた法整備の枠組みづくりを行うための端緒になったとして、有意義なものであったと考えております。 (執筆:立花浩司)



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