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法と科学の哲学カフェreport

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法と科学の哲学カフェ 「法と医療の不確実性――緊急時の医療コミュニケーションを題材に」

 中村プロジェクトでは、2013年2月2日につくば市の大型商業施設にある喫茶店と園芸ショップの併設店舗「With Garden」におきまして「法と科学の哲学カフェ「法と医療の不確実性――緊急時の医療コミュニケーションを題材に」」を開催いたしました。

 東日本大震災では、災害時の医療のあり方についてさまざまな倫理的・法的・社会的問題が改めて明るみになりました。また、近年の救急車出動の増加による キャパシティの問題など、緊急時の「医療資源の分配」のあり方が問い直されています。「法」整備が必ずしも十分でない状況下では現場の萎縮効果もみられる など、重大な問題が指摘されています。

 今回のカフェでは、医療現場の立場から香川璃奈さん(医師、TRE Forum)、言語学の立場から黒嶋智美さん(明治学院大学、行岡プロジェクト)、社会学の立場から小宮友根さん(日本学術振興会特別研究員)、そして法哲学者の立場から本プロジェクトの吉良貴之さん(常磐大学)および小林史明さん(明治大学)より、(1) 医療現場の声、(2) 言語学・社会学による会話分析、(3) 緊急時医療の法的問題の分析という異なる視点からの話題提供を行った後、カフェに相応しい、参加者を交えた忌憚のない議論を行うことを目指しました。

 話題提供では、現在進行している救急医療の具体的な係争事例が紹介され、その場に居合わせた誰もが食い入るように集中して話に聞き入っていたのが印象に残りました。行岡プロジェクトでこれまでに行われてきた緊急時の医療コミュニケーション(今回は会話分析が中心)に本プロジェクトの強みである法の視点を加味することにより、ポイントをしぼった多角的な議論を行うことができました。参加者にも恵まれ、プロジェクト外の複数の科学者の方々からの第三者的なご意見を提示いただけたのもつくば開催ならではと思っております。プロジェクトの枠を越え、分野を越えた多視点からの社会実装に向けたアイディアの交流は、参加者の方々のみにとどまらず、話題提供者ならびに運営スタッフのいずれにとっても有意義なものであったと言えましょう。カフェ後は、参加者を含む有志で懇親をかねた意見交換の場をもち、さらに議論を深めていただくことができました。法と科学の哲学カフェの実践をかねた協働の場づくりは、間もなく終了を迎える本プロジェクトを締めくくるうえでの今後に向けた播種になったものと考えております。 (執筆:立花浩司)

プロジェクト連絡先

 弁護士法人
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